学術本出版に関する費用とその補助、またそれに関する自分の失敗談

前回のブログにおいて、最初の査読コメントに対応について書き、今回においては出版契約に至るまでの改訂過程について書くことを述べておりました。しかし、今回についてはその過程期間と関連することながら、つい最近確定した自分の失敗談について書きたいと思います。それは、本を出版するのに関わる金銭的コスト(いわゆる自費出版ではありません)とその援助可能性についてです。この点について二つの失敗、すなわち安価なペーパーバックにて出版できないこと及び本の編集その他に関わる経費の補助を得られなかったことについてです。単純に言えば、これらの項目について上記の改訂過程の段階時に考え、行動に移すべきであったのに、それをしなかったことによるものであると言えます。これらについて日本語どころか英語でもほとんど書いてあったりするのを見たことがなかったので、書きたいと思います。

アメリカの学術本では大まかにハードカバー(表紙が厚紙など)とペーパーバック(薄い表紙)のに種類があります。前者はより高く(100ドルぐらいかそれ以上)、後者は比較的安価(30−50ドル)です。基本的には博士論文を改訂した本などはハードカバーで出して、その後ある数の本が売れた後にペーパーバックにて販売を開始するといった感じです。自分の契約もこれにならなった結果、120ドルで当初販売ということになりました。しかしながら、そのプロセスに囚われず最初からペーパーバックで出版することができるなら理想的です、なぜなら高い本(日本円で18,000円)を買える人は限られてるからです。最近においてはトレンドの変化もあるので、そこまで心配する必要がないかもしれません。出版社の編集者との会話においては、Cambridge Coreと呼ばれるデータベースが各国図書館と契約しており、そこを通じて電子書として読むことができる。以前ほどこの2種類の出版方式の格差は減っているので、特段最初からペーパーバックに固執する必要もない、ということでした。ただ、図書館の予算等の問題を考慮すれば、可能であれば当初からペーパーバックで出版することを目指すべきだと考えています。

そこで、出版契約以前の段階においてペーパーバックで出版するための費用を補助してる団体等を探し、コンタクトを取って申請し、資金を獲得すべきです。契約書上にハードカバーか当初からペーパーバックで出版することを明記し、同意する必要があるからです。これらのことは、その時になって知ったことでありました。もし、2023年5月の契約段階でペーパーバックに拘るとしたら契約のサインを延期した上で、費用補助を獲得した上で契約することになり、契約が数ヶ月から1年後になると思われます。自分の学術領域で思いつくのは、アジア研究協会(AAS)と台湾の蒋経国基金会 (CCK) などが申請を受け付けています。ただ、前者は契約のサインの延長を避けるため申請できず、後者について先月において実はペーパーバックの出版補助をしていることを知りました(サイトに明記しておらず)。読者の方が日本であれば、日本の各大学内の機関や財団等に問い合わせてみることをお勧めします。いずれにしても、タイミングが全てなので、査読コメントに反応してる段階において出版できるかわからないと思うよりも、出版を前提とた強気の発想でこれらの機関から補助を得られるようにしてください。

もう一つの出版経費に関わる項目は、Index(本の最後にある見出し)や地図など本の一部に関する制作コストとその援助についてです。或いは本の全ての部分について自分で制作する人もいるかもしれません。ただ、自分はIndexerにIndexの制作を、地図を書く専門の人に地図の制作をお願いしました。お二人ともケンブリッジ大学出版会に紹介していただいて、メールを交換した後契約して、制作後にお金を支払いました。米ドルで1,800ドルぐらいしました。これらの費用に関しても、補助申請の対象なはずです(少なくとも上記2団体)。しかし、これらの費用申請のタイミングは自分にとって完全なる失敗でした。2023年5月に契約した後、完全に本の草稿を完成させたのちIndexerにお願いするのですが、その年の夏の段階に完成させたのち即申請をすべきでした。というのもIndexを完成させてもらった後から製本開始までに、費用援助を確保し且つそのことを本に明記してもらう必要があるからです。自分は謝辞(Acknowledgment)で書けばいいと思ってたのですが、別途タイトルの下なのでにも明記しないといけないということを、CCKから後から(先月)聞いた次第です。結局のところ、AASにしてもCCKにしても出版契約の以前の段階でIndexなどの見積もりをし、ペーパーバックの費用と合わせて申請するのがタイミングとしてベストであると知りました。

以上のように、自分の無知と誤解から、出版費用援助を受けられるかどうか以前のレベルにおいて失敗しました。こうした事柄をそもそも誰にも聞いたことがなかったですし、そのことを誰かに聞かなかった自分の社交性の欠如に起因するするものです。出版のために草稿に集中していたこともあったのですが、その時間軸がちょうどコロナが盛んであった時と重なっていて物理的・心理的余裕がなかったのも事実です。今後においては、これら特殊事情はないでしょうし、英語圏の大学出版会から出版意向のある読者の方は以前出版した先輩や友達や上記の情報などを参考していただければ、タイミングについて間違えないのではないかと推測する次第です。

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最初の外部査読に対する反応とその過程