学術本のプロポーザル作成過程: (4) 内容
前回に引き続き、海外学術本出版のためのプロポーザルの内容について書いていきたいと思います。前回と同様にチェックされる点は研究の充実性、広範囲なアピール度、実現可能性という3点が大事と考えています。ただ、違う角度からの質問に答える必要があり、今回は「当該本と類似の学術本との比較」「スケジュールと文字数などの情報」「著者の適格性」「結論」という項目についてです。
自分の研究と類似する本をどのように討論するかは、歴史学においてHistoriography(歴史に関する学者などの著作の歴史)と言われるもので、博士課程のコースワーク以降ずっとことあるごとに考えることを要求されるもので大事です。というのも、他の歴史学者が自分の研究と類似の研究をどのようにしているかを発見し評価することで、自分の研究の意義があること示すことを重要視するからです。そして、本が対象としてる研究の充実性やアピール度を証明する上、「他の人がまだ研究していない」というよりも、できるだけ歴史的・理論的に関係するものを引っ張り出して評価できる能力を示すことが大事です。私の研究とプロポーザルとの関連で言えば、「英語で日本統治時代の台湾の歴史に関する文献が少なく、自分の研究が大事である」と言うよりも、例えばジェンダーや法制史の観点で植民地時代の朝鮮などの類似した作品を評価したり、他の帝国史と関連付けたり、近現代日本史の歴史学に対して日本統治期の台湾を語ることがどのような意味があるか、などを述べたりするのが意義があると考えます。プロポーザルのこの項目こそ、自分の研究を広範囲な角度で見られることを証明する絶好の機会であり、「他の人はXXしているけど、自分はYYの研究をしている」というような論述方法はもったいないです。実際、学術本のイントロにおいては、博論と異なり、文献を広範囲に引用し、吟味するような部分を削除して、自分の中で消化した上で本の重要性を議論する必要があり、大事な機会を逸失しないほうがいいです。
スケジュールなどの情報については、実現可能性と予算の問題を見ていると考えています。各章などを書く日程などは、どのように想定しているのか。例えば、自分の場合助教の段階でSabbaticalという研究だけに専念できる期間はないので、夏休みを中心とした時期に博論を改訂したこともありどうしても長期の計画にならざるを得ず、そうしたことを書いていきます。また、文字数、グラフや写真の使用なども無制限ではなく、出版会の予算等の関係から調整することになります。特に文字数は改訂の際、想定する必要があります。
著者の適格性の項目においては、履歴書を自分の言葉で再定義して、如何に当該本を書くための資格がこれまでの研究経緯・獲得した研究費・出版物の重要性と本との関連性などについて述べていきます。それらの陳述は本の出版の実現可能性を示すことになります。
結論部分においては、当該本の研究の充実性、広範囲なアピール度、実現可能性関して、再度別の言葉で示して締めくくることになります。他の出版会はプロポーザル内において他の項目を書くことを要求したり、本の1-2章を提出することを求めてくることになるはずです。いずれにしても、上記の三点について見ていると考えられます。以上がプロポーザルに関する私の見解です。もし、自分のプロポーザルを読んで参考にしたいという方がいれば、XのDMなりEmailで連絡していただければ、喜んでシェアさせて頂きます。